私が薬膳にいつからどっぷり浸かったのかは覚えていません。薬膳をライフワークにしようなんて全く思っていなかったのです。 でも興味を持ち始めたきっかけはある出来事でした。 私の母は中国出身で、中医学や薬膳を教える先生です。なので、もともと「薬膳」の存在は身近ではありました。でも、幼い私はオムライスやハンバーガーが食べたかったし、薬膳になんの興味もありませんでした。(ちなみに我が家でオムライスは一度も出たことがなく、憧れメニューNo.1)

大学を卒業した私は、新卒で広告代理店に入社しました。私は、広告は人を幸せにできる仕事だと今でも思っているし、どうしても入りたかった業界でした。毎日が忙しくて大変だったけど、楽しいことも学ぶこともたくさんあって、がむしゃらに3年間を過ごしました。 でもある時、体を壊しました。 その時は、自分の優先順位を下げ過ぎてボロボロになっていた時でした。第一に仕事。第二に彼氏や友達。数時間寝るために帰る家。洗濯バサミから直接着る洋服。 私もたくさんすり減っていたのに、人からの期待やヘルプのすべてに応えようとしていたみたいです。帰り道に歩いてるだけでわけもわからず涙が出てくるのに、自分のことを考える時間も余裕も、1ミリもありませんでした。 クライアントとの打ち合わせに向かう途中、突然息苦しくなり、肺気胸で救急車で運ばれ、手術して10日間ほどの入院をしました。 ベッドの上で24時間を過ごすのは初めてでした。時間がとまっているのか過ぎているのかも最初はわからなかったのですが、何もせず自分のことを考える時間がたっぷりあったのです。 その時、ふと実感しました。
「私が走るのをやめても、世界は等速度でまわっている」
「だったら、私は私のペースで走ろう」
そう気づいてから、私は自分の生き方で生きることに決めました。聞く耳なんて持っていなかった自分の心の声を聞くようになりました。 つらいことをつらいと認め、苦手なことは苦手と打ち明け、褒められたら素直に受け取り、我慢と無理を強いない、自分を否定しない生き方は、とても健全だと知りました。 私はなぜ未熟なのにあんなに完璧を目指そうとしていたんだろう。理想に程遠い自分を嫌悪して追い詰めていたんだろう。

25歳。四半世紀生きた時、母の言葉が素直に腑に落ちました。
「何事もバランス」
母はよくそう言っていました。よく聞く言葉ではあるのですが、おもしろいのが、その言葉を母が使う時は苦手なことに直面した時でした。 「いき過ぎはよくないから、ちょうどいいところを探そう」ではなく、「私はこれは出来ないけど、別のことが得意だからいいの」ということです。 当時の私には、開き直りや正当化にしか聞こえませんでした。でも、自分の弱みを認められること、そして前向きに受け入れられるということはすごく健全なことだと今は思います。努力しなくていいという訳ではありませんが、すべての人には向き不向きがあります。何かが出来ないこと、苦手なことは悪いことではありません。 これは、中医学の根底にある陰陽説と通じています。あらゆる物事は、陰と陽のように二面性を持って成り立っている。短所は長所でもあり、長所は短所でもある。一体化しているということです。100%長所しかない完璧な人間なんて在り得ないということです。 私は、70%の短所にばかり目を向けるタイプでした。でも30%は長所があるということに気づきました。その後、%の割合で分けられるものじゃないと気づきました。私の個性は、時に長所、時に短所として捉えられるだけで、ただただ100%私の性格なのです。 そう考えると、はじめて自分の性格を、人生を、愛すことができました。 自分を愛すということは、ナルシストになることではありません。ありのままの自分を認めて受け入れることです。それでいいんだ、と肩の荷をおろすことです。 そこからが人格の成長のスタートなのだと思います。変えたいところを変えるための努力はとても素敵なことです。でも、変わらない自分の良さを認めて生かすことも素晴らしいことです。 私は、自分を愛せるようになり始めたと同時に、人の魅力に気づくことが得意になりました。どんな人と出会っても、全員が違う個性を持っていておもしろい。個性そのものが、その人の魅力だと、自信を持って言えます。これを読んでくださっているあなたと知り合いではないかもしれないけど、私はあなたに魅力的だよ、あなたは素敵だよと言ってまわりたいのです。今のあなたは、ありのままで美しいのです。 自分のことを大切にしようという気持ちになると、行動が変わります。 心の声も、体の声も無視しないように、自分の人生を自分で幸せにしてあげられるように。

この体験から、自然に「薬膳」を取り入れるようになりました。自分の心身がどんな状態か、どんなものが足りていないか、どうしたら整うか、日々(自然と、できる範囲で)考える意識こそが薬膳の本質だと思います。丁寧で手間のかかる料理なんて全然していません。私は私らしく、自分を幸せにするためのセルフケアをしているだけです。 ボロボロだった時は、生理不順に生理痛もひどく、月経困難症と診断されピルを飲んでやり過ごしたし、閃輝暗点や偏頭痛で吐いたり寝込んだり、血管神経迷走反射や低血糖でよく倒れていました。心も体も無理させていました。よくないなって意識の片隅でわかってはいても、人間そういう時はあります。私にとって、あの時代は必要だったと振り返っても思います。過去も含めてすべて、わたしの人生として愛しく思っています。 今は、ただ生きているだけで健康です。不調が出る時もあるけど、すぐに気づいてすぐにケアしてあげる術も身に付いてきました。顔色だけでなく、性格まで明るくなったと言われます。過去の私が見たらどんなにびっくりするでしょうか。 心の健康は、体の健康につながり、行動の健康につながります。 自分の心と体を幸せにする手段は、いっぱいあると思います。没頭できる趣味、気の置けない友人、美味しい食べ物、リフレッシュできる運動。私はそんな幸せな日常のなかに、薬膳とお茶があります。みなさんにもセルフケアのひとつの手段として提供できたらと思い、このブランドを立ち上げました。

自分を消耗させないで。

自分を犠牲にしないで。

心の声を聞いてあげて。

体に素直に従ってみて。

自分にとっての幸せはなにか、

自分らしさってどんなものか、

ぜひ自分だけの答えを出してみてください。

その過程がすべてセルフラブに繋がります。

あなたの答えは、すべてあなたの中にあります。

私自身のためにも、心を込めてこの言葉を残します。

Love yourself, Care yourself.


Sakura Wada