生理前の不調について
女性に毎月訪れる月経。
月経の3〜10日くらい前になると、イライラ、憂うつ、乳房が張って痛い、下腹部痛、便秘や下痢、不眠などさまざまな症状を感じる方が多くいます。
これらの症状を総称してPMS(Premenstrual Syndrome/月経前症候群)といいます。
月経には個人差がありますが、一般的に以下のような月経が健康と言われます。
  • 月経周期は1ヶ月間の±7日で、毎月一定間隔
  • 月経期間は、3日~7日間
  • PMS(月経前症候群)がほとんどない
  • 月経痛、不正出血はない
  • 排卵期に、下腹部の張りや排卵痛がない
  • 経血の色は、赤~暗赤色
  • 経血にレバー状の塊が混じっていない
しかし生理前の不調は個人差があり、幅広い症状が現れます。
気血水のバランスの乱れや、自律神経を調整する肝、水分代謝を行う脾、ホルモン分泌に関係する腎の不調など、さまざまな要因によって引き起こされるためです。

中医学では、PMSは「気」のめぐりが悪い肝気鬱滞によるものと捉えます。
過剰なストレスを受けると肝が深く関わる排卵をコントロールする自律神経機能が乱れ、イライラ、憂うつ、情緒不安定、乳房が張って痛い、肩こりなどの症状が出やすくなります。疎肝理気作用がある食材を摂ることがおすすめです。

PMS以外にも、生理にまつわる不調のパターンはいろいろあります。

・気血両虚
気と血が両方不足した状態。胃腸の虚弱、疲労、栄養不足などによって「」が不足すると、生理に必要な血が足りずに生理が遅れたり、経血の量が少なくなります。また、体のエネルギー源「気」が不足すると、気が血をとどめられずに色の薄い経血がだらだらと続き、生理期間が長引きます。補気補血作用のあるものがおすすめです。

・肝腎陰虚
栄養不足やホルモンの低下により肝腎に陰血が不足し、生理に必要な血が足りずに生理が遅れたり、経血の量が少なくなります。通常は生理後に下がる体温が、生理後も高いままとなります。補陰作用があるものがおすすめです。

・腎陽虚
生殖機能に深く関わる腎が弱まり子宮を温める力が不足することで、生理が遅れたり、経血の色が薄く、量が少なくなります。補陽作用があるものがおすすめです。

・陰陽両虚
生殖機能とその機能を支える性ホルモンが不足することで、周期が不安定・下半身の冷え・むくみなどの陽虚の所見と、ほてり・寝汗などの陰虚の所見が交互に出ます。補陰補陽作用があるものがおすすめです。

・寒凝血瘀
生理周期が長く毎月生理が遅れるタイプは、冷えによって血のめぐりが悪くなる寒凝血瘀と考えます。痛みが強く出やすく、生理痛、肩こり、頭痛が起こります。理気活血作用があるものがおすすめです。

・脾虚痰湿
胃腸機能が低下し、水分代謝がうまくいかないことで体内に余計な水がたまるタイプ。頭や体が重だるい、むくみ、めまい、軟便などになりやすくなります。生理が遅れたり止まったりすることもあります。健脾利湿作用があるものがおすすめです。

・気滞血瘀
気の流れが滞ることで血行が悪くなり、経血がスムーズに排出されず、黒っぽいレバー状の塊が出たり、生理痛が強くなります。生理周期は遅れるか、もしくは、早くなったり遅くなったり不安定かのどちらかになります。去寒温経活血作用があるものがおすすめです。

PMSとして精神的な症状が出やすい方は、気のめぐりをよくする食材を取り入れ、日頃からストレスをためずに発散するようにしましょう。
少しずつ生理の不調が出にくい身体に近づけるため、体質診断で現在の体のバランスをチェックし、生活習慣から体質を改善していきましょう。

対策とアドバイス

  • ストレスをためないように、うまく発散させましょう。気のめぐりをよくする食材を摂ることもおすすめです。
  • バランスのよい食事を心がけましょう。
  • アルコール、カフェインの過剰摂取を控えましょう。
  • 深呼吸をしてリラックスしたり、ヨガやストレッチなど、有酸素運動を取り入れましょう。
  • タバコは控えましょう。
  • 血海、太衝、内関、関元、命門、足三里、三陰交、水道、陰陵泉、湧泉などのツボを押してみることもおすすめです。

中医学的ポイント

改善に必要な作用
疎肝理気、補気補血、補陰、補陽、陰陽両補、理気活血、健脾利湿、去寒温経活血

おすすめの食材

  • 疎肝理気:玫瑰花、ウコン、紫蘇、春菊、ミント、ジャスミン茶、柑橘の皮
  • 補気補血:なつめ、蓮の実、きのこ、カリフラワー、黒豆など豆類、山芋などの芋類、発酵食品、クコの実などのベリー類、ごまなど堅果類、黒米、黒キクラゲ、ひじき、牡蠣、青身魚、赤身肉、卵、ほうれんそう
  • 補陰:牡蠣、すっぽん、いかすみ、貝類、豚肉、鴨肉、クコの実などのベリー類、ごま、海藻類、オクラ、ほうれんそう
  • 補陽:杜仲茶、シナモン、くるみ、ムール貝、エビ、羊肉、鹿肉、ニラ
  • 陰陽両補:クコの実、桑の実、ごま、山芋、くるみ、杜仲茶、シナモン
  • 理気活血:玫瑰花、柑橘の皮、ジャスミン茶、春菊、三つ葉、キンモクセイ、ウコン、サンザシ、紅花、赤芍薬の花、青身魚、黒キクラゲ、ひじき、黒酢、ワイン
  • 健脾利湿:ハトムギ、トウモロコシのヒゲ、柑橘の皮大豆、そら豆、きのこ、かぼちゃ、白身魚、鴨肉、味噌などの発酵食品
  • 去寒温経活血:胡椒、シナモン、しょうが、にんにく、らっきょう八角、よもぎ、ニラ、山椒の実、紅花、サンザシ、桃、ワイン

おすすめの薬膳茶ブレンド

ジャスミン茶、玫瑰花、蜜柑皮、サンザシ、ペパーミント

監修医師

医師・黄田 正忠
医療法人社団忠恵会理事長、東洋医学未病対策研究会常任理事

中医師・和田 暁
高級中医薬膳伝授師、薬膳アカデミア創立者、世界中医薬学会連合会常務理事